純愛?オンラインゲームの遠距離恋愛と婚約~前編

依頼者からの電話

こんな問い合わせから始まった依頼でした。

「ネットで調べてほしいことがあるんですが」

「ええ、わかりました。それでは来所いただけますか」

と言うと、か細い声の依頼者は電話を切りました。

証拠品を見る

急いでいるのか、依頼者は雨の中すぐに来てくれました。
年齢は25歳、可愛い雰囲気の服装、喋っていると電話と同じくか細い印象の方です。

「詳しく教えていただけますか」

依頼者はノートパソコンを開くとゲームの画面を出してきました。

(なにを調べるんだろう)

見ていると、いわゆるSS(スクリーンショット)という物でした。これはMMOと呼ばれるもので、最近は映像がとても綺麗になっており、実物さながらの動作や会話ができる点です。依頼者は猫耳のかわいい装備をつけたキャラクターで、横にいる屈強な戦士が「リアルな彼氏でゲーム内の旦那なんです」と彼女は答えます。

顔を見ることがないので、本音を出しやすく恋愛関係に発展しやすいのは私も知っていたので、特に驚くこともなく、「そうですか、出会いった時期は?」等と、淡々と確認を取っていきました。

説明そこそこに、次々と会話の画面を見ると「好きだ、一緒になろう」「早く逢いたいね」などと、普通のカップルが繰り返す会話が繰り広げられている。依頼者はSSの説明を一通り終えると概要を話出した。その彼氏はA県A市だという。会うのはいつも依頼者からで、交通機関を乗り継ぎ、いつも2泊程度行くそうだ。

しかし、ここ最近になって彼氏(以降戦士君で)の様子がおかしいという。そもそも電話をかけても出なかったのが、ゲームに入ってくる日が不定期になった事が気になるという。

ずっと一緒にいたい、という話も盛り上がっており、依頼者はA県に引っ越しを検討したそう。何度もA県に通う中で不動産屋にも通いだしたところ、戦士君から「同じ地域はやめて欲しい」「隣のI県にして欲しい」と言われる。

きっと仕事の都合もあるんだろう…と考えつつも、気になって仕方がない。戦士君とお泊りの時に彼のカバンを見たところ、とある封書が見つかり、その写メを見せてくれた。

「勝手に見てはいけないのはわかってたんですが…」

封筒にはA県A市役所の文字と、その中には子供に関する通知書が一通。その日泊ったのは、はじめて戦士君が自宅に案内してくれた駅前のワンルームだったそうだが、封書の住所がどうやら違うらしい。私は余計な事は言わないようにしているのだけど、思わず口をついて「既婚者じゃないんですか」と、言ってしまいました。「それよりも問題なのは」と、依頼者が軽くさえぎって次の写真を見せると、彼がLINEのとある女性と仲良く話をしている会話が写っている。

「この人、私とのLINEではハートマークなんて使わないのに…!」

 

強い気持ち

(そっち?)と思わずツッコミそうになったが、依頼者は続けた。

「いつも旅費は私が全額出して、泊まるホテルも食事も私が全額出しているんです」

「それはいいんですが、オンナがいる可能性が気になる」

依頼者は次のような仮定を出した。

 

・戦士君は離婚はしている

・離婚しているが、子供の世話をしていて私には言えないでいる

・強力な恋のライバルがおり、そいつがLINEでいつも恋路の邪魔をしている

 

そして、相変わらず夜になるとゲームには参加しているが動きも変なのだという。急に動かなくなって、何時間もしてから戻ってくるとか、その間はなにも連絡が取れないとか。とにかく彼の情報がもっと欲しいし、知りたいんです。不安で仕方がありません。と、要約するとこういう依頼になった。

私は情報を一通り整理し、実際にかかる時間をなるべく最小で検討し、以下のような説明をしました。

「まず、遠方になることと、相手に関する情報がゲームメインで非常に少ないです。基本的な調査(住所、氏名の再確認、職場)から行います、料金もすぐ調べて終わればいいのですが、相手の状況によっては変動する事もあります。いくつかケースを出しておきますので、まずは最低限の調査から始めましょうか」

時間がかかるものは基本的に高くなります。特にMMOでの知人となるとリアルな情報が少ないので、紐解くのに手間がかかる事がある。後から少しづつ小出しで負担させるのは好きではない。

「はい、一緒になれるかどうかの瀬戸際だと思うし、彼がおかしいのはオンナが原因だと思うので相手がわかれば十分です」

そう返事をいただいたので、見積もりを提示した上で調査を開始した。依頼者も事務員を短大を卒業してからコツコツ貯蓄したお金を切り崩すという。彼女の強い気持ちを汲み取り、相手の情報をなるべく正確に取りに行こうと決意しました。

現地へ

今回は車で函館から渡ることにした。少し手間をかけたドライブで節約できる、レンタカー代もバカにならない。こういう無駄な負担は依頼者にかけたくない。現地ではいつも利用する全国チェーンのTホテルにチェックインを済ませる(朝ごはんがあるのは調査員にとってありがたいので、こういうホテルは助かる)地理状況や(一応)聞いている勤務先、渡された封筒の住所を見て通勤ルートもある程度想定しておく。戦士君は車が好きらしく、少し前のセルシオを改造してフルスモークにしている写真を見せられた。目立っていて良いが、好戦的なタイプかもしれない、一応気を付けておくか。と、頭の中で整理をしつつ、まずはターゲットの勤務先を確認に行った。

戦士君の職場はトンカツ店の店員らしく、仕事を終えるのが0時過頃、ゲームに入ってくるのが1時ぐらいだそうだ。夜になるのを待って、早速調査員のKとトンカツ店に入った。

店は思ったより小綺麗で、日本料理を出していても違和感がないようなおしゃれな店だ。Kがコーラのグラスを傾けながら私にささやいてきた

「奥の右手、あれ戦士君じゃないですか」

帽子をかぶっているが、間違いなく戦士君だろう。今日が出勤という事は、自宅は絶対に留守になっているはず。Kと素早くカツを流し込み、精算した後は依頼者からもらった青い封筒の住居地へ向かうことにした。

驚きの事実

現地につくと、平屋の一戸建てが並んでおり雰囲気的に市営か県営か、そういう住宅の印象を受けた。封筒の居住地に行くと予想通り「戦士君」の表札が飾ってある、外はあまり飾り気はないが、部屋の明かりはついており換気扇もまわって美味しそうな匂いが漏れてくる。表には子供の自転車もあり、これが想像と違ってなければ既婚者という事で調査もそれ以上求められない可能性もある。依頼者にその場で電話をしてみる事にした。

「いえ、その家に今いるのは、奥さんではないと思います。LINEでやり取りしていた女が勝手に入って押しかけ女房的にご飯を作っているんです。その家の人も写真を撮って、名前を確認してください」

Kと目を見合わせ、調査の新たなゴングが聞こえた気がした。

その後、戦士君の職場に戻るが駐車場がわからない。位置関係上、通勤は車かバイクでないと難しいはず。「帰ってくるのを確認しませんか?」Kの提言もあったが、場所は田舎のど真ん中で車を置く場所がどこにもない。おそらく数時間と待たずに住民に目を付けられそうな予感がしたので、いったん帰ろうとホテルに戻った。

ホテルに戻ると、再度依頼者からLINEで

「今、ゲームに入ってきました。自宅を見に行ってください」

と言われたので、再度見に行くと車がない。どういう事だ!?

Kと二人でまた目を見合わせ、ゲームの中にいるのであればオンラインで間違いがない。一応ネカフェを片っ端から見に行くか、と市内にある3件の駐車場を見に行くが車はどこにも止まっていなかった。戦士君はどこにいるんだ?

 

 

(後編へ続く)

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